貴方も人間だったんですね
まさかここまで、こわれ者の祭典でブログ引っ張るとは思わなかったよ!引き続き成宮氏のパフォーマンス。
私を置いて出て行った父親に向けて。
いつも遠く離れた場所に見える凄く眩しい光。
あれはなんだろう。
でもいつも見えるんだよ、真っ直ぐなライトみたいに。一本の強烈な光が。
物心ついた時には家の中に当たり前のようにあった暴力。
祖父からテレビのリモコンで殴られて階段から突き落とされた。
お前は家族の最下位なんだ。
口の中に広がる鉄の味。
母親は悔し泣きをする私の肩を抱き言いました。
『絶対に殺しちゃダメだからね、あんな人の為に自分の人生を無駄にしちゃダメだからね。』
悲しい事に、私が母親から一番初めに教わった事は、ありがとうを言おうねとか、ごめんなさいはちゃんと言おうねとかじゃなくて、祖父を殺すなという事でした。
そんな祖父から逃げるようにして、父親は家族を捨てました。
水族館や遊園地で売っている身体に悪そうな味がするポテトは、私の憧れで、100円と少しで買えるそれは、私には手の届かない幸せの家族の象徴の物でした。
パニック発作を起こして寝かされた処置室のベッド、その様子を見に来た看護婦さんが、私の脈を計ろうとして、持ち上げた私のボロボロの手首を見て言いました。
『こういうのはねぇ、保険が効かないんですよ。』
私の人生はもうダメだなぁと思った時に見たんだ。
頭の奥に一本の光がある事に。
気付けば自分の後ろには長い道がある事に。そこには私の足跡がちゃんと残っていました。
そういえば、私を残して消えた父親は、幼い頃に母親に置き去りにされた子供でした。
ねぇ、お父さん、どこでどんな場所で暮らしているんですか?
私は、私はまだ時々思うよ。自分が子供のつもりになってしまうんです。
夜遅い帰り道は迎えに来てくれるんじゃないかって。
休みの日には家族揃ってデパートに連れてってくれるんじゃないかって、ねぇお父さん、ねぇお父さん、貴方も人間だったんですね。
貴方も家族の葛藤の間で苦しみ、傷付く人間だったなんて、私と同じように家族の言葉に傷付き、私と同じように家族のあり方について悩み、私と同じように憎しみと愛情の狭間で苦しみ、私と同じようにただ幸せになりたいと思う。
ねぇお父さん、貴方は人間だったんですね。
本当は気付いてた、私の心にある死にたいと殺したいは、いつも愛して欲しいと同じだけの重みがしてたんだ。
だから今辞めたらどうするの?
生き抜いて来た今をどうするの?
どうにか守って来た自分をどうするの?
貴方の足跡が残ってついた貴方の道をどうするの?
生き抜いて来た今をどうするの?
いつも、遠く離れた場所に見える、凄く眩しい光。
私はそれを人の想いだと思う事にしました。
何度も何度も繰り返し、巡ってきた、繰り返し巡ってきた命のバトンだと思う事にしました。
とても憎い家族が残してくれたのは、暴力の記憶ともうひとつ、10のうちの1にも満たないかもしれない。
でもきっとあったもの。
そして貴方の中にも必ず、貴方の中にも必ずあるもの、そして、それが私の名前。
それをこう呼ぶんだ。
『愛』
と。
葛藤の狭間に隠れているのは愛で、だから時々立ち止まるんだ。
暗闇に慣れたその目でこれからも、貴方はきっと生きていけるよ。
今回もほぼ全文です、生で絶叫朗読聴いたらきっと泣く人はいると思います。
それくらい、心に響く。
次で、こわれ者の祭典レポはラストです。
成宮アイコ